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東京地方裁判所 昭和60年(ワ)12560号

原告

五味美穂子

右訴訟代理人弁護士

本橋光一郎

被告

東京コンピューター用品株式会社

右代表者代表取締役

渡辺進

主文

一  被告は原告に対し、金三〇万円及びこれに対する昭和六〇年一一月二日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その一を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(請求の趣旨)

1  被告は原告に対し、金一〇〇万円及びこれに対する昭和六〇年一一月二日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

第二当事者の主張

一  請求原因

1  (当事者)

原告は、昭和五〇年三月五日被告の従業員として入社し、同六〇年七月二五日同社を退職した。

2  (賞与)

(一) 被告は、毎年一月から六月まで在勤したものを対象として毎年七月一〇日に夏季賞与を支給し、その支給額は給与一か月分を下回らないのが例となっている。

(二) 原告の昭和六〇年一月から六月までの期間における月額給与は、一五万円をこえるものであったから、原告の昭和六〇年夏季賞与の額は少なくとも一五万円を下らない。

3  (退職金)

(一) 被告の就業規則(昭和四五年一二月一日実施)には、「退職手当は、二年以上勤務せる者については、総給与額の五パーセントとする」旨の定めがある。

(二) 原告が昭和五〇年三月から同六〇年七月までの間に被告から受領した総給与額は少なくとも一七〇〇万円を下回ることはない。

(三) したがって、原告の受くべき退職金は少なくとも八五万円となる。

(四) 原告は、昭和六〇年七月末頃、被告に対しその支払を催告した。

4  よって原告は被告に対し、右賞与一五万円及び退職金八五万円合計一〇〇万円とこれに対する弁済期の後である昭和六〇年一一月二日以降完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実のうち、原告が昭和六〇年七月二五日退職したことは否認する。

2  同2(一)の事実は賞与支給日を除き認め、同(二)は争う。

3  同3(一)(二)の事実は認め、同(三)は争う。

三  被告の主張

1  原告は、昭和六〇年四月三〇日被告を退職したのであって、被告は同年六月三日原告に退職功労金として一二万七〇〇〇円を支払い、原告はこれを受領している。

2  被告の就業規則は、会社都合の場合退職手当は総給与額の五パーセントを支給する、勤続二年以上で円満なる自己都合退職の場合には功労金を支給する旨変更し、原告もこの変更に昭和五五年七月一〇日同意した。そして被告は原告に対し原告の退職が自己都合を理由としていたので右のとおり功労金を支払っている。

四  被告の主張に対する認否

被告の主張1、2の事実のうち、原告が被告から被告主張の日に一二万七〇〇〇円を受領したことは認め、その余は否認する。

右一二万七〇〇〇円は、原告の昭和六〇年五月分の給与であり、原告は給与として右金員を受領したものであって、功労金の支払はなされていない。

第三証拠

本件記録中の書証及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  賞与について

1  被告では、毎年一月から六月まで在勤したものに、給与一か月分を下回らない額を夏季賞与として支給していることは当事者間に争いがない。

2  ところで、原告は、昭和五〇年三月五日被告に入社し、賞与支給期間及び支給日の後である同六〇年七月二五日まで在籍し、同日退職した旨主張し、被告は原告は昭和六〇年四月三〇日をもって退職した旨主張して争うので、この点について判断するに、(証拠略)によれば、以下の事実が認められる。

(一)  原告は昭和五〇年三月五日被告に入社し勤務していたが、昭和五九年一二月に至り、翌六〇年六月一二日が出産予定日であったことから、被告代表者渡辺進に対し、昭和五九年一二月末日をもって被告を退職したい旨申し出た。渡辺進は、被告の取引先である日本電気との関係上原告の退職を二、三か月延ばすよう原告に要請し、原告もその要請を入れて同六〇年三月末日まで勤務を継続することにした。

(二)  原告は、昭和六〇年三月末ころ、被告に対し、今後の予定について、同年四月中は通常勤務をしたいこと、同年五月中は、週休二日制と有給休暇を利用して、また、同年六、七月は産前産後の休暇のため出社せず、同年七月末日をもって退職したい旨連絡した。そして原告は右予定に従い、同年五月二日まで出社し、その後は出社しなかった。原告は同年六月六日には出産を終えた。その後原告は、同年七月二〇日付で、同月二五日をもって被告を退職する旨通知するとともに賞与及び退職金の支払いも合わせて請求した。

なお原告の給与は、昭和六〇年当時月額一五万円(手取額にして約一三万円)であり、毎月末締めで翌月五日支払われ、また賞与については毎年七月一〇日に支払われていた。

右認定に反する被告代表者本人尋問の結果は俄に措信しがたく他に右認定を左右する証拠はない。

右認定事実によれば、原告は昭和六〇年五月二日まで出社したもののその後は出社していないのであるが、翌日以後は有給休暇、産前産後の休暇を取得しており、被告もこれを了解していたものといえるのであって、原告が昭和六〇年一月から六月まで在籍し、かつ賞与支給日たる同年七月一〇日にも在籍し、その後同年七月二五日をもって被告を退職したものと認められ、被告の賞与支給基準に該当するものといえる。

なお、被告は、原告に対し同年六月三日に一二万七〇〇〇円を支払っているところ(この事実は当事者間に争いがない)、被告は、右金員は既に退職した原告に対する功労金である旨主張するが、右認定のとおり原告は昭和六〇年五月には二日まで出社し、その後は有給休暇を取得している経緯からすれば、右金員は同年五月分の給与として支払われたとみるのが相当である。また(証拠略)によれば、雇用保険被保険者資格喪失確認通知書記載の離職年月日が昭和六〇年五月三一日となっていることが認められるが、前示退職までの経過に照らすと、右記載から直ちに退職年月日が昭和六〇年五月三一日ということもできず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

3  したがって、被告は原告に対し、昭和六〇年七月一〇日限り賞与一五万円を支払うべき義務がある。

二  退職金請求について

1  請求原因3(一)の事実は当事者間に争いがないところ、被告は、右就業規則は二年以上勤務の自己都合退職の場合には功労金が支給されるにすぎない旨変更され、原告もこの変更に同意していた旨主張し、原告は就業規則が変更されたことも、また変更に同意したこともない旨主張するので、この点について判断するに、(証拠略)、被告代表者本人尋問の結果によれば、被告では、今までの就業規則は、被告とケイコ貿易株式会社とに共通の就業規則であったので、これを被告独自のものとし、また被告が日本電気の関連会社であったので同社の就業規則に合わせる必要があったこと、そして更に退職金の支給についても、従来自己都合退職者には就業規則にいう総支給額の五パーセントではなく功労金として相当額を支払っており、これを明文化する必要もあったこと、そこで、被告代表者渡辺進は、昭和五五年七月一〇日原告を含む従業員の過半数を集め、就業規則改訂について話し、原告が同日従業員代表として改訂に同意する署名をしたこと、改訂後の就業規則は被告独自のものであり、その一二条には、退職手当は総支給額の五パーセントを支給する、勤続二年以上で円満なる自己都合退職の場合は功労金を支給する旨規定されていること、原告より永く勤務した椛沢秀幸には昭和五六年一一月四日功労金として九万五一〇〇円が支払われていることが認められ、右事実によれば、被告の就業規則は被告主張のとおり変更され、原告もこれに同意したものと認められる。なお原告の主張にそう原告本人の供述部分は前掲各証拠に照らして措信し難く他にこれを覆すに足りる証拠はない。

ところで、原告は前示のとおり、昭和五〇年三月五日入社し、同六〇年七月二五日には原告の都合により退職しているのであって、また退職時被告との間にトラブルがあったとの事情は認められないから、右就業規則一二条の功労金受給資格があるものというべく、またその功労金の額については、被告が一二万七〇〇〇円をもって功労金と主張していること、及び前示のとおり、原告より永く勤務した椛沢秀幸が九万五一〇〇円であること、原告の給与は一五万円(手取額約一三万円)であることを考慮すると、原告の一か月分の給与一五万円をもって相当額というべきである。

なお、被告は功労金として一二万七〇〇〇円は既に支払済みであると主張するが、被告の支払った一二万七〇〇〇円は原告の昭和六〇年五月分給与であること前示のとおりであって、右主張は理由がなく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

2  したがって、被告は原告に対し、昭和六〇年七月二五日限り、功労金一五万円の支払義務があるというべきである。

三  よって原告の本訴請求は、金三〇万円及びこれに対する弁済期の後である昭和六〇年一一月二日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分に限り理由があるからこれを認容することとし、その余の部分は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、仮執行の宣言について同法一九六条一項を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 遠山廣直)

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